実はハードのほうが凄い、マイクロソフト
Microsoft社製品というと、Windows OSやOfficeシリーズなどのソフトウェアのイメージが強いですが、昔からソフトだけでなく、ハードウェアやデバイスに対してもかなりの力を注いできたことは、あまり認知されていないように思います。
特に入力デバイスに関しては、他の周辺機器メーカーが数年かけても追随できないような、先進的な設計がなされた名品が数多く存在します。
現在でも、Microsoft Sculpt Ergonomic Keyboardなど人間工学的にデザインされたキーボードが、驚くべき安価で販売されていますが、
これも巨額の開発費を回収の見込みのないハードウェア事業にまわすことのできる、Microsoft社の資金力があってのことです。
apple製品のある意味、異常とも言えるデザインへのこだわり(ジョブズ以降は全然だめですが、、、)と比べられてしまうと、徹底的に実用性を重視したMicrosoft製品は、どうしても面白みにかけてしまうのですが、
そんな中で私が2001年の発売開始直後から、なんと18年間も使い続けているMicrosoft製品があります。
Microsoft Trackball Explorer (トラックボールエクスプローラー)1.0です。
ポインティングデバイス史上、最高の完成度を誇るトラックボール
Microsoft製の周辺機器というのは、非常に上質なプラスチックが贅沢に使用されており、驚くほど長持ちするのですが、18年も使っていると色々と壊れてきます。
途中、左クリックボタンがすり減って壊れたり、スクロールボタンが経年劣化によってドロドロに溶け落ちたりしながらも、部品を交換してなんとか延命措置を続けてきました。
どうしてそこまでして使い続けていたかというと、代わりとなる製品が結局、いまのいままで現れなかったから。新製品が出るたびに色々とためしてみるんですが、やっぱりダメ。
私の場合、27インチトリプルモニターの左側にブラウザ、真ん中にillustratorのアートボード、右側にはillustratorのツールウィンドウというような使い方をするので、
右から左へとカーソルを移動するだけでも、マウス全体を何度も持ち上げなくてはならないので、しだいに手首が疲れて痛くなってしまいます。
でも、Microsoft Trackball Explorerならば、人差し指を軽く動かすだけで、3つの画面を行ったり来たりできるので、何時間使っても大丈夫。
またブラウザのスクロールを、《右クリック+ボールの回転》に割り当てておけば、手指の中でも疲れづらい人差し指に、操作ストレスの大部分を集中させることができます。
これだけならば、Trackball Explorerならずとも、他のトラックボールでも同じことができるように思えますが、
実際に使ってみると、各ボタンの位置、ボールの大きさ、手首の傾斜の角度、ホイールの位置など、どれをとってもTrackball Explorerには遠く敵わないと気付かされます。
そんなことから古くからのTrackball Explorer信者は、故障したときのために、オークションで状態のよい個体が出品されていないかを常にチェックしつづけ、何台かのストックを持っていることが多いようです。
使用頻度の低い美品は、プレミア価格で1万円近くしたりするんですけどね。
貴重な愛機を長く使い続けるためのTIPS
愛用者なら良く知っていることだと思いますが、だいたい壊れるところは決まっています。
- 鉄の支持球が磨り減り、ボールが回転しづらくなる
- 手のひらの部分の塗装が剥げて、下地が見えてくる
- ボタンが反応しなくなる
- カーソルが反応しなくなる
- ホイールのゴムが溶ける
それぞれの対処法を書いていくと、
1 鉄の支持球が磨り減り、ボールが回転しづらくなる
支持球が新品に近い状態の個体を手に入れた場合、
摩耗を防ぐためには、スキー用のフッ素配合スプレーをボールに塗るのが効果的です。
フッ素スプレーは少々高いですが、鼻の脂を塗ったり、シリコンスプレーを塗ったりするよりも、スルスルの持続力が圧倒的に長くなります。
もし、すでに摩耗によりフラットスポットができてしまっているのならば、
支持球をルビーに交換するのが、やはり良いでしょう。
交換する石は、天然石よりも安価な人工ルビーのほうが真球に近いので、こちらをオススメします。
注意するのは石の大きさで、もとの支持球よりも大きいと、接触面が大きくなってしまうので、スルスル度合いが薄れます。
2 手のひらの部分の塗装が剥げて、下地が見えてくる
分解して銀色の部分のプラスチックを塗装するのがよいです。
手の脂が付いているので塗装前に脱脂を入念にするのですが、石油系の溶媒だとプラスチックが溶けます。アルコールなどで脱脂後、下地のプライマーを塗り、上塗りの塗料を数回に分けて塗装します。
自動車用のカラースプレーが摩耗に強くてオススメですが、つや消しブラックにすると、見た目がいまどきのトラックボールっぽくなります。
3 ボタンが効かなくなる
ハンダの付けなおしで治る場合もありますが、マイクロスイッチの交換が確実です。
OMRONのDF2-01F-Tです。
斜めに取り付けると、ちゃんと反応しません。
4カーソルが反応しなくなる
反応したりしなかったりだったり、カーソルが飛んだりする場合は、たいていセンサーに糸くずが付着していたり、ホコリで汚れていたりなので、ダスターで清掃します。
それでもダメならば、基盤を取り替えたほうが早い。
このときにセンサーの角度が変わると、まったく反応しなくなるので要注意です。
5ホイールボタンが溶ける
完全に溶ける前に自動車用のタイヤの保護スプレーを塗っておくと、ある程度、回復します。
加水分解のベタベタはエタノールに漬けるととれますが、正直言って気休めです。
ボタンなどのプラスチック部品の黄ばみは、酸素系漂白剤につけて一週間ほど日光に当てておくときれいになります。
MACでTRACKBALL EXPLORERの5ボタンをすべて使うには
そうなんです。Macだと5ボタンマウスが使えないんですよね。
OSX用のマウスボタンの割りあてプログラムでは
- USB Overdrive
- Karabiner-Elements
- Controller Mate
の3つが有名ですが、
USB Overdriveは他のプログラムと干渉することがあるので、Karabinerか、Controller Mateがいいと思います。
使い分けとしては、
- 「英数/かな」キーの割りあて変更も同時に行いたい場合は【Karabiner-Elements】
- 左手デバイスやジョイスティックなどを多数同時に使用するならば【Controller Mate】
どちらでも同じことができますが、私はController Mateを使用しています。
ちなみにボールでのスクロールバーの制御には、Hammerspoonをつかっています。
まあ、こんな感じですが、Microsoft Trackball Explorerの愛用者ならば、いまさら説明するまでもなく、どれも良く知っていることでしたよね。
丁寧に扱いながら、できるだけ長く使用したいものですが、